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幸せの里芋 [塗師屋]

11月10日 悩ましい事柄に気をもんでいても季節は進んでいく。今日は気をとりなして里芋を掘り起こした。

稲刈り、籾摺りが終わると少し緊張が解ける。だから、一時野良仕事のことを忘れる。稲刈りと前後するように秋野菜などを作付すればよいのだが、手間がかかる葉物はなかなか作付できない。三足の草鞋を履いているのを言い訳にしているせいもある。そうして気が付くと畑は草茫々たる有様になる。

春に植え付けた里芋と八頭は未だ畑に残っている。夏の内には土寄せもしているので、雑草は伸びているが畝の間に茂っていだけで、芋の葉はその草の上に葉を伸ばしている。
昨年は高温と日照りのせいで里芋の収穫は散々な状況だったが、今年はどうだろうか。
草をかき分けて万能鍬を振りおろし、里芋を一株づつ掘り起こした。一畝を堀起こしては子芋、孫芋を解き、籠に入れ、次の一畝をまた掘り起こす。
八頭は鍬を入れる前に茎を切る。姉はこの茎を干した芋茎が好きだった。
八頭は子芋を解いて種芋にし、親芋を食べる。ゴツゴツとした芋を根や茎を削り落としてこさえるのは手間がかかる仕事でもある。塩ゆでをした八頭は灰青色をして白く粉が吹いたようになる。堀り上げた八頭にほっくりとした味わいを想像した。今年の芋はまあまあの出来と言ったところか。

この里芋や八頭がどんな品種なのかは分からない。ただ、里芋については父がいろいろと試した中で最も食味が良い里芋だとして種芋を残してきたようである。そうして何年も作り継いで来た。私もかれこれ20年以上にわたりこの種芋を継いできている。
里芋を煮しめる時には皮をむいてこさえてからしばらく放っておくとよいと母が言っていた。里芋は乾いた切り口に新たな皮ができて煮崩れしにくくなるのだという。
醤油で煮しめた里芋も中は真白で、何とも言えない食感である。おおよそ仏頂面をしていても、この食感には思わず頬が緩む。そんなこともあって何年も継いできたこの里芋に、私は「幸せの里芋」と名前を付けている。
種芋を残したら、「幸せの里芋」の煮つけ作ってもらおうと思う。


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