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醤油ラーメン [追憶]

今から45年ほど前のことだと思うが僕らは長野に旅をした。(長野には何度も行っているので何時の折のことか忘れてしまった・・・)その日の宿は長野県庁に近いホテルだったと思う。僕らは色々巡って食べて巡っておなかが一杯になって夕方にホテルに着いた。 そんな風だからホテルについても夕食のために部屋を出る気分ではなかった。それでいて夕飯時には何か口寂しかったので僕らはフルーツの盛り合わせのルームサービスを頼んでそれをつまんだ。それでも夜半になるとやはりおなかが空いてきたので何か食べたくなってきた。フルーツ盛り合わせは残っていたがもう十分だったので外に出て何か食べようということになった。
外でと言っても当てがあるわけではなかったのでホテルのフロントに近くに店がないかと尋ねるとホテルの裏通りにラーメン屋があるというので僕らはそこのお店に行った。
街灯に照らされた赤いレンガ色のホテル外壁と大きな楠の植え込み抜けて道を渡りその先の暗い通りに件のラーメン屋があった。深夜になろうというのにサラリーマンらしき客が一人二人入っている。僕らが紺色の暖簾をかき分けて中に入ると、一足先に来た客が亭主に一言“ひとつ”と注文を伝えながら椅子に座った。それは常連客であろうかと思ったが“ひとつ”というだけで注文が通じるのかと僕は訝しく思った。
店は小さな木製カウンターと幾つかの木製テーブル、今風の赤や黄色を差した装飾はなく店の中を見回すといわゆるメニューらしきものも無い。正面カウンターの左上の壁に数種の品書きが下がっている。そしてその品書きには醤油ラーメンのみ、ほかにはゆで卵など付け合わせが数品書かれているだけだった。僕はそれをみて先客の一言の意味を理解した。そうして僕らも一言“ふたつ”と注文をして深夜のラーメンを食べた。
この思い出を妻に話すと記憶にないという。いったい僕は誰と旅をしたのだろう・・・。
そこは僕が小さかったころ叔母さんに連れられて初めて“中華そば”を食べたお店に似ていた気がする。

醤油スープに縮れた細麺、半切りのゆで卵、シナチク、鳴戸巻、ホウレンソウ、海苔、それから白胡椒・・・。

妻とラーメン屋に入ると妻は決まって醤油ラーメンを注文し胡椒を沢山振って食べている。最近になってこのことに気が付いた。確かに醤油ラーメンが好きなのは知っていたが気が付けは随分いっぱい胡椒を振って食べている。あれれ、入れすぎちゃったのかと驚いて妻に質すと妻は昔から醤油ラーメンに胡椒を沢山入れてたべるのが好きだったのでずっと前からそうしているという。そうして「今まで知らなかったの・・・」と。僕は40年も気づかずにいたんだ。

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