無駄にして余るほどの

今年は随分道具を購入した。幾つかの道具には思い入れもあるし使い慣れた道具はなかなか代替がきかない。偏狭な釣りのための道具は必要にして充分なだけ持っていると思う。だから新製品など特に気にしていなかったのだが、気が付くとモデルチェンジされている。知らないうちに廃版になったものもある。フライリールもその一つだ。
フライリールはフライフィッシングを最も象徴している道具だと思う。真新しいリールは置き傷さえ着けぬ様にと丁寧に扱い始めるが、その機能や性能に信頼を置くようになる頃にはフレームは傷だらけになる。そうして手に馴染んだリールは誇らしげにフライロッドに取り付けられる。
なかでもハーディ　フェザーウエイトやマーキス、オービスＣＦＯ、エーベル　ＴＲシリーズは信頼しているし思い出と思い入れが詰まっている。これらは丁寧に扱えば一生物・・・と思っていたが、フェザーウエイトは転倒してボディーのリムにクラックを入れ、ＴＲシリーズは車で踏みつけてスプールを交換し、ＣＦＯは磨り減ったラインガードを交換した。これらは今でも現役だし同時に二台目も手に入れて使っている。
勿論、改善して欲しい部分もある。鋳物のフェザーウエイトはバーストックにして欲しいし現にそうなっている。バーストックのＣＦＯはラインガードの耐久性を改善してほしいがモデルチェンジしてしまった。廃版のＴＲシリーズには復活してほしいがソックリさんが存在する。

フライフィッシングはフィールドも対象魚も幅広いが、一方で特定の釣りだけをする偏狭な面もある。この狭小な部分に対してフライフィッシングの道具はかなりニッチ産業的だと思う。だから致し方ないことだと分かっている。それでも定番だと思っていた道具が手に入らなくなってしまうのは寂しい気がして、ままよとばかりに幾つかを手に入れてしまったのだ。
「過去の人」になったような気分だ。無駄にして余るほどのリールに囲まれてそう思った。